君はどうするだろうか。
怒るだろうか。
嘆くだろうか。
泣くだろうか。




いつでも僕は周りに馬鹿にされていた。
先生達でさえ馬鹿にしていた。
「どうしてあの子が、ジェームズ達と一緒にいるの?」
「一人だけバカで、可哀想だね」
「ピーターだっけ?かっこよくないし」
「釣り合わないね」
特に女子から、非難の声は厳しかった。
「あいつ、あの三人の足引っ張ってるよね」―――




いつでも僕の周りの三人に憧れていた。
頭もいい。
性格もいい。
見た目もいい。
そんな彼らになりたかった。
僕のいい所なんて見つからなかった。
一つもなかった。
人より劣っているところばかりで。




そんなとき、は言った。
「ピーターだって、いい所はあるよ。
優しいし、素直だし。いい所あるじゃん!」




嬉しかった。
僕がその言葉でどれだけ救われたか。
はきっと知らない。




だけど…。




卒業式の直後だった。
シリウスが僕の目の前であっさりとを奪っていった。
僕の、唯一の希望だった彼女を。
僕を、唯一助けてくれた彼女を。




は僕のことなど思っていなかった。
口先ではあんなキレイゴトを言っておいて。
シリウスがいいんじゃないか。
僕を無能だと思ってるんじゃないか。
こんなことを思うようになった。




もシリウスも、ジェームズもリーマスもリリーも。
皆滅びてしまえ。
死んでしまえ。




そう思った。




そんなとき、ヴォルデモートから声をかけられた。
「我等の目的に手を貸さないか」




二つ返事で僕は彼に付いた。
僕は知っていた。
シリウスが僕を「秘密の守人」にした理由を。
僕が無能だから、誰も僕が守人だとは思わない。
言わば囮だ。




結局はシリウスも僕をバカにしていた。
ジェームズだってそうだ。
リーマスもそうだ。
みんなで人をバカにして。
絶対にいつか痛い目にあわせてやる。








その日は来た。
人間を大量に殺し、その罪をシリウスに被せた。
ジェームズも殺した。リリーも殺した。
こんなに気分のいいことはない。
リーマスもショックで廃人のようになっているだろう。




こんなに気分のいいことはない。
無能だと思っていた人間にやり込められた気持ちはどうだ?
僕だってこれくらい出来るんだ。




こんなに気分のいいことはないのに、僕は泣いていた。




一人残されたは僕のところに来てくれるだろう。
そんな期待を胸に抱いて、僕はのところへ行った。
シリウスと共に暮らしていたの家へ。




そこで僕を待っていたのは憎しみだった。
は僕を拒絶した。
「何で私があんたと一緒に行くと思うの?」
憎悪の目で僕を睨んだ。
「何てことしたの!?」
の両目からボロボロと涙が流れてきた。
「ふざけるな、シリウスを返せ!」




眩い閃光と共に、は倒れて動かなくなった。
僕の目から、再び涙が流れ始めた。




僕は誰にも必要とされない人間だ。
無能で、カッコよくなくて、いい所もなくて。




の動かなくなった身体を思い切り蹴飛ばした。




そう思うなら、あのときにそう言ってくれればよかったんだ。
僕なんて無能だと。
「いい所ある」なんて言わなければよかったんだ。
それならば、今ごろ君は死んでいなかったかもしれないのに。




もう涙は流れていなかった。




真っ暗なトンネルに出口は見えない。




唯一の希望がなくなってしまったから。




このトンネルはどこへ続いているのだろう?




天国から君は僕を見ているか?




もし見ていたら…




君は、どうするだろうか?










あとがき
久々にあとがきを書きました(笑) 昨日、お風呂の中で突然思いついたお話です。 シリウスファンには怒られそうな話ですが…。
ピーター夢とどちらに分類するか、とても迷いましたが、「シリウスに取られた」と 言っているのでシリウス夢と分類させて頂きました。
コンプレックスの塊のような人間になりたくないな、と思う一方、どの人間にも こういう黒い部分はあるんじゃないかな、と思います。
私は、ピーターはその「黒い部分」に負けてしまった可哀想な人間だと 思っています。ピーターなんて大嫌いですけれども(笑)
最後まで読んで下さって、どうもありがとうございました。
H16.4.1 Shion Halu